あさがお にっき

小さな庭の記録や、日々のこと

読書の記録

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真藤順丈『ものがたりの賊』

母が新聞の新刊紹介欄で見つけ「読みたい」と言っていた小説。私も気になったのでこちらで書籍を購入して読んでから、母に送ることしました。

本の帯に「日本文学至高のアベンジャーズ爆誕」とありますが、いろんな意味で的を射ているキャッチコピー!

作品中では、日本最古のものがたりである『竹取物語』の「翁」から始まり、古代〜中世〜近代〜現代(昭和)までの名作日本文学のキャラクターたちが怒涛の勢いで登場します。「坊ちゃん」を含め主役級で登場するキャラクターたちもいれば、しれっと市井の人々のひとりとして出現する人まで、さまざまです。巻末にある「注釈&原典解説」には100以上の作品が取り上げられており、この小説を読むだけで日本文学の名作を網羅できてしまいそう。日本の文学作品の世界とは、なんて豊かなのでしょうか。自分の知識の乏しさが悔やまれます。

ところで、この物語の中に無数に織り込まれている文学作品とはいったい何を象徴しているのでしょうか。文学作品とは、フィクションとはいえそれぞれの時代における市井の人たちの眼差しを映し出す鏡のようなものであり、本作では無数の文学作品が人々の営みそのものを示しそして強調しているように思います。歴史とは人々の日々の営みの膨大な蓄積によって編み出されていくものであり、決して教科書的で単一な神の視点から語られるべきではないのだという著者の意図があるように感じられました。だからこそ、市井の人々の一人である「坊ちゃん」だけが、本作における「サノス(アベンジャーズヴィラン)」とある意味真っ当に?対峙することができたのではないかな。

よし、感想文が書けたので母に本を送ろう!